La Lune Lunatique

mmemiya.exblog.jp
ブログトップ

福島差別

例の「福島の真実」(!!)の一話目にこんなことが…というのを、最初に見たのはどこでだったか。
もう忘れてしまったが、第二話は、早売りキャプチャの情報をTwitterで公式発売日前に見ていたぐらいで、(Twitter アカウント持ってないんだけどね)この問題に関心を持って眺めていた。

この問題、ロジックとして、「カリヤ某が福島県に取材に行ったあと鼻血が出た」を「放射線の影響で鼻血が出る」に結びつけるのは、「とある犯罪の犯人が発達障害者だった」を「発達障害者は犯罪者になりやすい傾向がある」に結びつけるのとなんら変わりはない。(きちんとした疫学的なデータも科学的根拠も挙げられないであろう、という意味でね。)

そう考えると、こうした言説にどんなに反論したって、「じゃあ発達障害者が犯罪者になりにくいという証拠があるのか」とか言われて話が平行線(鼻血問題の場合は「低線量被曝で鼻血が出ないという証拠があるのか」)、という憂鬱な結末も想像がつき、更に、福島県がいかに抗議声明を出したとて、「人権問題(発達障害者の例の場合はね)とかが煩いから行政は真実を隠蔽してるだけ」と言われてしまうのがオチ、という流れも想像できて更に憂鬱だけど。「現実に知人が発達障害者の被害にあっている、それを口に出すことのどこが差別だ」「被害者よりも人権が大事なのか」とか言われるとか。

と、5月12日にフェイスブックで呟いていたのだが、やはり当然のように、Twitter上で流れている反論は陰謀論一色だ。つまり、政府や県は、この問題について真実を暴かれるとまずいので、あんなに美味しんぼを叩いているのだ、という陰謀論。(別に環境省や福島県は、美味しんぼを叩いているわけではなく、現在の知見を述べているだけだと思うのだけどね、実際は。記者会見でコメント求められた知事や大臣の発言は別として、Web上の文章は、作品への非難にならないよう、かなり気を配った文章だと思うよ。時系列を考えると、あの文章創るために、何人の人がGW中に休日出勤したのかしら、と思ってしまう。文章1枚だけじゃなく、取材への想定問答とか作る手間を考えるとクラクラするわ。)

まぁ、多分、発達障害者についての、どこかの団体なりの表明に、表立って異議を唱えることは、原発問題よりはずっとはばかられることだろうと予想する。それに引き換え、政府や県の対応を批判することは全て「巨悪と戦う」と同義であると思っている人もいるので、こっちの問題のほうが、陰謀論をずっと唱えやすいのは確かだろう。

で、発達障害者についての、親の会とかの表明に異論を唱えにくいのは、おそらく、「そうは言ったってやっぱり発達障害者は犯罪者になりやすいんでしょ」って発言が、障害者差別と言われるかも、ということを、当事者が薄々自覚しているから、だと思う。
と、ここまで考えて気づいたのは、つまり、今回の事件で美味しんぼ擁護にまわり、政府や福島県の陰謀を唱えている人たちは、この問題が福島差別の問題だとはちっとも思っていないのだろうな、ということだ。
だけど、Twitter上で、数多くの福島県在住者たちがこの問題に怒りの声を挙げているのは、彼らがこの件を、福島差別、と受け止めているからだ。なにしろ「福島に人は住めない」と言われてるんだもの。そこに住んでいる人は汚染されてる、って言ってるわけでしょ、この漫画。「福島えんがちょ」って言ってるんでしょ。それが差別の問題でなくてなんだというのだろう。

人間が差別的感情から自由になれないのは、誰だって自分自身を振り返れば簡単にわかることのはずです。ただ、それを内心にとどめておくのか言動にうつすのかは違うと思いたいし、ものが発行部数激減の出版物であろうと、出版物上で垂れ流すのは更に違うと思う。発達障害者の例で言えば親の会とかが抗議声明を出してもちっとも不思議じゃないので、今回の場合、福島県が抗議をしてもおかしいとは思わない。というか、県民感情を考えれば、当然、県としての見解を発表すべきだろう。

ただ、環境省が一般論で話をとどめたのに、大臣とか片山さつき氏とかがなんか言い出してるので、それはまたなんか方向性がな~。
そんで、どんな形でこの話が収束しようと、「真実を隠ぺいするための圧力が」とか、変な感じでくすぶり続けるのは端から目に見えてるのが、更になんとも…。やっぱどう考えても、これを発行しちゃった編集の責任は重いと思うよ。

これで、モノが発達障害者問題だと、更に見えない形でくすぶり続けるであろうから、そういう見えないものと戦うのは大変なんだけど、しかし、差別だとは全く思わずに「福島の農産物は怖い」「福島への旅行は怖い」って言っちゃう人に、どんな言葉をかければ届くのか、も、これまた難しい。低線量被曝の健康への影響は、「あるかないか詳しいことが分かってなくって、はっきりしたことが言えない」わけではなくって、「影響が小さすぎて、その他もろもろの、我々が日々受けている影響(本人や家族が喫煙者だとか、食習慣だとか、遺伝の問題とかね)と切り離して、低線量の放射線だけの影響を語ることが出来ない」ものなのだ、ということを粘り強く伝えていくしかないのだろうけれど、怖い、という気持ちが先に立てば、「宇宙飛行士は鼻血出してない」も、「1960年代から90年代までの方が日本の空間線量はよっぽど高かった(あの頃の方が被曝量がずっと多い)」とかいう言葉も、なかなか届くものではないのだろうな、と思う。
けれども、放射線怖い、が、福島怖い、になったら、それは差別に加担することだ、とは自覚しなければならないだろう。

で、差別的感情から少しでも自由になるためには、迂遠なようだけど、なるべく現場に行ってみるとか、物事に関わる、ということしかないんだろうなぁ、と思う。たとえば、福島の人はこの3年でものすごく放射線に詳しくなってると思うんだけど、ホントはみんながそうならなきゃダメだよね、みたいなこと。
[PR]
by mmemiya | 2014-05-14 21:18 | 日々雑感 | Trackback | Comments(3)
トラックバックURL : http://mmemiya.exblog.jp/tb/22043387
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by at 2014-05-15 00:18 x
いや~理路整然とした、しかし押し付けがましい文章に相変わらず感服です!素晴らしい・・・。福島の人の気持ちに寄り添う、というのは偽善じゃはがれるってことですよね。
Commented by mmemiya at 2014-05-15 20:53
夏様、ご無沙汰しています。押し付けがましい文章でごめんなさい…。福島のために何をしているわけでもない私ですが、この問題にはものすごく腹が立ってます。そして、今しがたネットで、福島の真実(と書くだけで腹立たしい)の最終話に寄せられた編集部コメントが流れてるのを見て、呆然としています。スピリッツ編集長って、元から極論の人(多分、何を言ってもこちらの言葉が届かない人)だったんだ…。編集部がこの漫画の掲載を止めなかったのは、これが原因だったんですね…。
Commented by mmemiya at 2014-05-15 21:28
福島に住み続けているお母さんが、「県外に移住しないなんて児童虐待してるのと同じ」とか心ない言葉をかけられてきた状況をまた蒸し返しておいて、どの口で「議論が深まることを願う」とか言ってるんでしょう。移住したい人もそうでない人も同じように支えよう、って考えをなぜ持てないんでしょうね。