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La Lune Lunatique

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「恋するきみたちへ。」 上村茂仁

例によって例のごとく、まだ読みかけの本だったりするのだけれど。

岡山県で産婦人科医をしつつ、若い女の子たちからの性に関するメール相談にのり、ホームページでも性等について語り合える掲示板を運営している著者が、これまでに寄せられたメールや掲示板でのやり取り、女の子たち、男の子たち、そして思春期の子どもを持つ親たちとの座談会などをもとに出版した本。

私は、恋愛方面では晩生で、高校生だの、まして中学生だのといった時期にカレシがいるなどという経験はなく、そりゃ、あこがれたり好きだと思っていた人はいたけれど、告白なんて勇気もなく、正直なところ、これまでは、10代で妊娠しただの性感染症だのという子どもたちって、自分とは別世界の人間のように思っていた。

ところが、この本の中で取り上げられている掲示板でのやり取りは、別に性だけに限ったことじゃなく、タイトルにも「恋するきみたちへ。」とあるとおり、例えば、好きな人にやっと告白したんだけど、相手の返事がなんだか曖昧で、相手のちょっとした態度に一喜一憂して、掲示板で顔も知らない他の女の子たちに励まされて…みたいなのも出てくるのだ。
なんだか「わたしゎ」とか、読み慣れない表記法で最初はちょっと引き気味だったけど、しばらくすると、ああ、自分にもこういう一喜一憂ってあったよな、分かる分かる、と読んでいるうちにやっと気がついた。この子達と私は別に別世界の人間なんじゃなく、地続きなんだ、ということに。

誰かが自分に気があるらしい、って、多分、けっこう伝わるもんじゃないですか。でもって、例えば私が好きだと思っていた相手が、いかにも10代の男の子らしく、性に関する興味で頭がいっぱいで、おや、こいつ、俺に気があるらしいじゃないか、そんならちょっと甘い言葉でもかけてやれば、みたいな風に考え、行動する人間だったとしたりしたら、こういう問題って、全然他人事じゃなかったんだよ、と。私がこういう世界は自分とは無縁、と思っていたのって、それは、たまたまの結果、偶然に過ぎなかったんだよ、と。

大体、私の場合、20代も後半になってから、けっこう馬鹿なことを色々やってたしなぁ…。そう考えれば尚更、高みから「今の若い子はどうなってるの」なんて批判は、絶対できないよなぁ…。

あと、今まで読んだ部分でもう一つ印象的だったのは、17歳で妊娠して出産したという子が「小学生とかの頃は、命は大切、素晴らしい、と習って、で、自分は妊娠して嬉しくてたまらなかったのに、周囲はすごい否定的で傷ついた」というようなことを語っていた部分。
よく考えれば法律上も女の子は16歳で結婚できるわけだし、確かに妊娠・出産は祝福されるべき素晴らしいこと、みたいなのが子ども向けの性教育の現状だったりするわけだよね。

大体、高校生に避妊法の教育なんて、と目くじらを立てる人だって、20代の人たちが「え?そんなことで妊娠ってするの?知らなかった」などと、妊娠や避妊について、あるいは性感染症について無知だったりしたら「おいおい、ちゃんと勉強しろよ」「大丈夫か」と、正しい教育の必要性を感じるんじゃないか。
では、高校生への避妊教育はなぜ否定する人が多いのか。そもそも高校生がセックスなんてすべきじゃない、と言ったって、事実は既にあるわけで、そこからスタートするしかないじゃないか。あるいは、No Sexというためにこそ、妊娠や避妊、性感染症の正しい知識を与えるべきではないのか。これだけのリスクがあるのだから、あなたたちにはまだ早いのだ、と。

しかし、じゃあ、自分の子どもにどう性教育をしていったらいいのか、となると、うーん、と考え込んでしまうし、思わず「学校でやってください」と言いたくなってしまう。それは、一つには現代の日本では(ここで「現代」と書いたのは、江戸時代とかはだいぶ状況が違ったんじゃないか、と思うからなんだけど)性に関してオープンに語る、というのは恥ずかしくてやりにくいことになっていて、まして親子の間では語りにくいから、であり、さらには、他人からの性教育ではない、親から子への性教育というものに、モデルを見つけることが非常に困難だからだ。
自分が親とそういう話をしたのって、母となんかのドラマを見ていて、たまたま登場人物が「結婚するまでは処女でいるべきだ」みたいな発言をしていたとき、母親が「お母さんもそう思う」と一言ぽつりと言った、という記憶しかないからなぁ…。

かといって、それまで何も語り合ったことがなくて、思春期に急にそういうことを親子で語り合う、なんて絶対に不可能だろうしなぁ…。
理想としては、性がどうこう、というよりもっと広い意味で子どもを受け止めつつ、親の基本的なスタンスだけは伝えて、避妊具の使い方だのなんだのなんて具体論は、よそで覚えてきて欲しいと思うんだけれど、よそで正しい知識を得るとは限らないしなぁ…。(私みたいに活字中毒の人間は、そういう情報ももっぱら書籍から得るので、あんまり間違ったことは覚えなかった、と思うのだけれど…。いや、でも、知識があることと実践は別問題だ。)
ああ、難しい。だけれども、考えなきゃな、親として、という気持ちにさせられる本。10代の男女だけでなく、あらゆる世代の人に広く読んで欲しい。
by mmemiya | 2006-12-16 23:26 | 読んだ本