La Lune Lunatique

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ペラペラですか?

「フランスにいたことがある」と言うと、すぐに「じゃあ、フランス語はペラペラですか?」と聞いてくる人が、少なからずいる。残念ながら、私のフランス語力は、ものすごく限定的なものだ、という話は前にも書いた。しかしところで、そもそも、「ペラペラ」って、なんなのだろう。

例えば、うちの4歳児と6歳児は、そろそろ日本語ペラペラ、と言っていいような気がする。
6歳児の方は、基本的な文法は、ほぼ全部入ってると思える(敬語は、まだ一部の丁寧語しか、マスターできていないが)。4歳児も、発音としてはサ行音、ラ行音までほぼ完成していると思えるし(断言できないのは、どうも、彼女の中では例えば「ディ」と「リ」の区別がまだ付いていないようだから。しかし、「ディ」ってのは、本来は日本語の体系の中にない音のはずで、そういう意味では、日本語の発音はほぼ完成と言っていいはずだ)、語彙力で兄に劣るとはいえ、文法的にはあまり遜色ないレベルになってきたのではないか、と思う。ああ、そういえば、下の子が受動態を使うのを聞いたことがあったかどうか、記憶にないのだが。
そもそも、私は別に子どもの言語発達に詳しいわけでもなんでもないし、詳細に自分の子どもの発言を録音して分析したりしているわけでもないので、以上はあくまで、日々を振り返っての印象でしかないのだが。
実は昨日も、娘が「たとえば…」と発言して、「おお、<たとえば>なんて話し出すのか!」と、そっちの方に意識が引きずられてしまった挙句、その後、娘が何を言っていたのかさっぱり思い出せない(笑)。とんちんかんな表現が続いていたら、逆に覚えてるような気もするので、となると、適切な比喩が続いていたんだろうか。

まぁ、いずれにせよ、子ども達のコトバそのものをとりあげてみれば、充分、正しい日本語を話しているし、発音も流暢である。が、それが大人に立ち混じって社会の中でやっていける日本語であるか、と問われれば、当然、答えは否である。まず、決定的に語彙力が足りない。表現力、というのも語彙と密接に関係するだろうが、それも不十分。そして、フォーマルとインフォーマルの場面に応じた使い分け、というのも未熟だ。(言語を成り立たせるところの思考力そのものが未熟である、という話は、この際、脇に置いておく。)

しかしながら(しばしば言われることではあるが)、「英語がペラペラ」というのは、どうかすると、うちの子らの現在の日本語力ぐらいのレベルを指してるんじゃないの?としか思えない時がある。もっと簡単に言っちゃえば、発音がネイティブに近ければ、それでもう、「とても上手な英語を話してる」と思われてしまう、ってことなんだけど。

外国語をどうやって身につけさせるか、という議論は、実に盛んだ。その一方で、第一言語の獲得のためにどうすべきか、なんて議論は、ほとんど聞かない。しかし、では、母語/第一言語は、放っておいてもいいほど、たやすく獲得できるものなのか。
そうそう、外国語を、ただずっと聞いていれば、赤ん坊が耳から聞いて言葉を覚えるように、外国語だって覚えられる、なんて話もあった。しかし、実際のところ、基本的な文法+発音が完成するのに、生まれてこの方ずーっと聞いてきた母語においてすら、約7年(6歳に到達するまで、として)という月日がかかっている。ここから、社会人として通用する言語活動(読み書きの、いわゆるリテラシーまで含めて)を行えるようになるまで、更に9年前後の月日を要するわけだ。(義務教育の終了を、一応の完成と見做した場合。)

と、上記の文章で「母語」と「第一言語」の区別が曖昧なのは、私の中で、それらの定義がまだしっかりと弁別されていないからなのだが、ここでは仮に、幼少期から意識せずに身につけてきたものを母語、身につけた過程を問わず、現時点でその人にとって最もうまく意思表現、思考が出来る言語を第一言語としておく。(あー、でも、そうなってくると、今度は母語と継承語の区別ができなくなってくるなぁ…)

実際のところ、例えば国際結婚家庭とか、両親は同一の言語を話していても、それが、その家庭が住んでいる社会の主流言語ではない、といったケースにおいては、単なる生活上の用を足す以上の、自分の情感までを含めた表現が可能な第一言語をどう習得させるか、あるいはどの言語を第一言語に設定するか、というのは、深刻な問題だと思う。

逆に、第一言語が確立されていれば、第二言語は第一言語を凌駕することはできないけれど、第一言語を利用して第二言語を獲得していくことが、ある程度は可能になる。例えば、第一言語であれば無意識に習得していく筈の構文の規則性を、「文法」として勉強することは可能だ。
前に、私が試みにフランス語だけでモノを考えようとしたらほとんどできなかった、という話を書いたけれど、そんな私でも、習い覚えた文法知識と辞書の力を借りて、フランスの大人社会で通用する文章を多少はでっち上げることが可能で、それは少なくともフランス語ネイティブの幼児にはできないことだろう。

・・・ってな話を「ペラペラですか?」と聞いてくる人に、短い時間で理解してもらおうなんてのは、はなっから無理な相談なんですけどねぇ。
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by mmemiya | 2008-08-18 22:39 | 日々雑感 | Trackback | Comments(0)
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