La Lune Lunatique

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「育休世代」のジレンマ

本日、東京往復の新幹線の中で読了。
著者は今年30歳の女性、東大を卒業して新聞社に入社、やりがいを感じてバリバリ働いていたのに、いざ妊娠したら、それまで意識したことのなかった壁にぶち当たった中で、好き勝手なことを言われることや、それに対して明確に反論できないことに苛立ち、妊娠9ヶ月で大学院入試を受けて、育休中に修士論文を書き上げた。その論文に加筆修正したのがこの本。
「そもそも大企業の総合職なんか、世の中の超少数派であって、そういう世界の狭いくだらない競争社会を降りることを大問題みたいに取り上げることが間違っている、というのもまっとうな意見だと思う。しかし、それでも、そこには悔し涙があると私は言いたかった。」と著者が書く通り、取り上げられた事例は、いずれも総合職として就職し、結婚し、出産したという、ある意味恵まれていると言われる女性たちなのだが、彼女たちが直面した葛藤と、その葛藤を引き起こしている社会構造を理論的に指摘して、ごく一部の女性たちの事例を、働いていようがいまいが、既婚だろうが未婚だろうが、子どもがいようがいまいが、女性が現代社会でどうしたってぶち当たる「女であること」に起因する諸問題への普遍性につなげた筆力は見事というしかない。
要所要所で、自分の身とひき比べながら色々なことを考えさせられた。第二子の育休から復帰して今年で10年目のこの私にしたところで、働きやすい制度が相当整っている職場に就職して、おまけに、世間のものさしで言えばものすごく育児に協力的な夫も得て、復帰後は仕事量に相当配慮された職場に配置してもらった上に、同期男性にほとんど遅れることなく昇進までさせてもらった、という、どう考えてもものすごく恵まれている立場にいる、ということは百も承知で、それでもなお、仕事と家庭の両立についての葛藤、そしてその葛藤をなぜ男はほとんど引き受けずに生きていられるのか、という疑問を抱え続けている。
この本は、また同時に、私より一回り若い筆者たちの世代が少なくとも学生時代は所与のものと考えてきたという男女平等を、おそらく筆者たちほどは信じておらず(※高校進学時、中学の同級生の女の子に「そんな学校に行ったらお嫁に行けない」と言われたのは忘れられない。まぁ、一学年10クラス中4クラスが男子クラスだったし、こんな田舎だし、女の子が勉強なんかしたって、みたいな空気がまだまだ濃厚に漂っていた時代ではあった。今、母校に男子クラスがない、と聞くだけでも隔世の感がある。)だからこそ、仕事を続けやすい職場、という視点で就職先を探した私(筆者の言葉を借りれば早い段階でジェンダー秩序に組み込まれている)が、この先、筆者のような自分より若い世代に、どんなロールモデルを示せるのか、これからは、もう少しそういうことを考えないといけない年になったなぁ、と強く感じさせてくれた本でもあった。この本が取り上げているのは、まだ子どもがせいぜい2歳ぐらい、当然就学前、という、かなり限られた期間においてのジレンマでもあって、それでも、広く読まれるべき価値は本当にある本だと思うのだけれど、女の人生、まだまだ先は長いよと、長期的な視点も必要だと、そう言わなければならない、というか、長期的な展望を抱けるような姿を見せなければならないのも、20年以上は働いてきた人間の責任の一つかなぁ、などと、いい年して今頃ではあるけれども思う。
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by mmemiya | 2014-10-22 21:25 | 読んだ本