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La Lune Lunatique

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悪い病院なのねぇ~で終わる問題ではない

<横浜の病院>准看護師ら助産行為、神奈川県警が捜索開始

第一報をネットで見て驚いた。
この問題は、もう長い間、医師会と厚生労働省その他、関係団体の間で揉めている問題で、実際のところ、現在でも、看護師が助産行為をしている病院など、他にいくらでもあるだろう。(私が第二子を出産したところでも、陣痛が来て最初に内診をしたのは助産師ではなかった。看護師なのか準看護師なのかまでは、尋ねなかったし、知らないが…)

「医師一人では、特に分娩第一期に、何度もお産の進行状況を確認している時間がない。かといって助産師はそんなに大勢いない。だったら、看護師に適切な研修等を実施して、医師の指示の下、内診行為(更に具体的には、子宮頚管の状態、児頭の下がり具合のチェック)をさせればよい」「このままでは、分娩の取扱いを続けられない医療機関が更に増える」という意見が一方であり、他方では、「子宮頚管の状態と、児頭の下がり具合を診るだけの行為を、他の行為と切り離せるのか。それ以外の、例えば児の回旋の状況などを確認して、なすべきことを総合的に判断しなければいけないのではないか」「助産師資格を持ちつつ、看護師として働いている(助産業務をしていない)者が相当数おり、その人々を活用すべきではないか」などといった意見あり。
で、「助産行為」の見直しについては、少なくとも厚生労働省においては、まだ、別途議論する、ということになっていたはず。
参考URL

そんな中で、このニュースである。厚生労働省の判断と県警の判断というのは無関係なのかもしれないけれど、話し合いに全く決着がついていない段階で、いきなり家宅捜索。容疑が保助看法違反ときた。医師側にしてみれば驚天動地の出来事ではないか。

最近、何かと言えば、医師が逮捕されたりというニュースが世間をにぎわせるけれど、まさかこの問題で、こんな唐突な捜索が行われるとは私は思わなかった。もちろん、背景には、一人の妊婦さんが亡くなっている、ということがあるわけだけれど、その死亡と、看護師の内診行為とに、果たして因果関係があるのか。あると言えそうと踏んだから、捜索に至っているわけか?(素人考えでは、そんな立証、ものすごく難しいのでは、と思えるのだが…)

私は専門家ではないので、助産行為とは何か、とか、それを助産師ではなく看護師が行うことの是非、とか、助産師の受けた教育と看護師の教育の違い、とか、そういったことは何も分からない。分からないけれど、専門家の間でさえ、どうすべきなのか意見が割れている問題で、そう単純に、善だ、悪だ、という結論が導き出せるとは思えない。
根拠となる厚生労働省の通知にしたところで、保助看法そのものには「助産とは何か」の定義はないから、「助産行為を看護師がやるのは違反」というなら、じゃあ助産行為とは何か、から話を始めないといけないのに、厚生労働省が一方的に通知しているだけ(=その通知は厚生労働省側の法解釈であって、そもそもその法解釈でいいのかどうか)という話だって出てくるのだ。

少なくとも、これは、「うわぁ、悪いことしてた病院だったのねぇ~」なんて、単純な結論を導き出せるような話ではない。
そして、今現在、この病院で出産を予定している妊婦さんたちは、どこで出産の日を迎えるのか?突然助産師を大勢雇えと言っても無理な話。かといって、これだけお産ができる病院が減っていると騒がれているご時世に、他の医療機関が引き受けられるのか?

なにより、これで更に、お産を扱う医療機関が激減したとしたら、どこの誰が、どんな責任を引き受けてくれるというのだ?
by mmemiya | 2006-08-25 00:29 | 日々雑感