La Lune Lunatique

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2007年 08月 20日 ( 1 )

エキサイティングな本

相変わらず、数冊、並行して読みかけ状態、な私の読書状況、ではあるけれど、今、読んでいる本のうち2つが、なかなかエキサイティング。

一つは、前からこだわっている「日本の伝統食って?」にまつわるような本。

例えば、学校に100年以上の歴史があれば「伝統校」って言っていいかな、と思うのは、なにしろ学制の発布が明治だからに他ならない。同じように100年ぐらい伝統があっても、大正琴を「日本の伝統楽器」というのは、私はやや躊躇する。(いや、「大正琴 伝統楽器」って検索すると、けっこういくつもヒットするんですけどね。) 箏(普通には「琴」と呼ばれる楽器)ですら、伝統楽器かなぁ、雅楽の楽箏なら間違いなく伝統楽器だけど、山田流が俗箏を改良したのっていつだ?とか悩んじゃいますが、私は。

人間が食事をするのは、有史以前から当然のことで、まぁ、どの程度からが「料理」と呼べる状態だったか、という話になるのだろうが、とまれ、料理となれば、まして100年前のものを「伝統食」と呼んでよいのか確信が持てないのは、その、長い食事の歴史の中で、どの程度の長さを持てば「伝統」と呼べるのか不明瞭だからだ。

しかし、百歩譲って、仮に100年前の食事を日本の伝統食、と呼ぶとしても、その食事は、例えば「ご飯とお味噌汁、魚に野菜の副菜」なーんてものでは絶対ありえない、ということが「食生活の歴史」瀬川清子著 を読むとよく分かる。
だって、まず、米食べてないもん。米より雑穀中心の人のほうが、絶対数としては多いもん。玄米か白米か、というようなレベルの話ではない。
味噌汁は食べてたかもしれないけど、味噌は「おかず」(ご飯に添える、なめる)だったりもしてるし。魚は場所にも寄るだろうが、正月のご馳走(塩漬けの魚が)という所も多かったようだ。
まだじっくり読み返すと色々発見がありそうだけれど、「ご飯、味噌汁、魚、野菜の日本型食生活」なるものがあったとしても、日本の過半数の人がそんな食事をしていた期間というのは、恐らく、相当短いだろうな、というのがざっと流し読みしての感想。

もう一つは「環境リスク学」中西準子著。のっけから、著者が、当時は素晴らしいとされていた下水処理施設が、工場排水、特に重金属をまったくと言っていいほど処理できていないことを明らかにした話、そしてそのために様々な嫌がらせにあった話にぐいぐいと引き込まれる。
長年、不遇の中にありながら、それでも著者が下水道問題やダイオキシンなどの問題に取り組んできた、その意志の強さはどこから来ていたのか、と読み進めていくと、著者の激動の中にあった生い立ちが淡々と語られる。「思想論争ではどちらが正しいという決着をつけられない」と感じてきたから、「出すべきは事実、思想の違いを超えて認めることができる事実、これこそが今の思想的な勢力関係を崩す力を持っている」と考えて、「ファクト」に重きを置いてきた、という著者の言葉が胸に迫る。
そして、著者がたどり着いた先は「リスク論」。生活の利便性の向上に、何がしかのリスクは常に付きまとう。(年間の交通事故死者の数を考えればそれは容易に分かる。)では、そのリスクはどの程度の確率で起こるものか、我々は、どの程度ならリスクを許容できるのか、と、妥協点を探っていくという、非常に手間のかかる仕事だ。
私は、今の日本社会が、「リスクというのはどんなわずかでも認めたくない」という社会になりつつあるように思えて、そこが非常に気がかりなのだが、こうした、リスクを把握して、社会の共通認識を作り上げていく試みは、とても大変だろうが、本当に重要なことだと思う。
「環境」問題とは、我々を取り囲む全ての「環境」が対象になるからして、その「環境」にまつわる数多くのリスクを把握し、妥協点を探っていくというのは、気が遠くなるほどの時間がかかるだろうとは思うのだが…。
まだ第1部しか読めていないし、これからじっくりこの本を読んで、自分なりに、身の回りのリスクについて考えてみたいと思っている。ただ、正確なリスク把握には、専門家のきちんとしたデータが不可欠であり、一市民としては、一人でも多くの専門家が、こうした観点から、各種データを整理してくれるのを待つしかない、という歯がゆさがあるが…。
そうそう、ここにも「野菜の持つ発がん性」の話が出てきた。野菜自体は、やはり、自分を食べるものに抵抗しなければならないから、天然の農薬ともいうべき成分を含有する(無農薬野菜でそれが高くなるのかどうかは触れられていない)、が、その「発がん性」のリスクよりも、野菜を食べることで得られる利益の方が大きいから、我々はやはり、野菜を食べないわけにはいかないのだ、という話。(なお、この部分は、著者の研究範囲ではなく、他の専門家の話の紹介、といった位置づけである。)

と、かたい本ばかり紹介してしまったが、そういえば、合間に読んでいる「すべてを食べつくした男」「やっぱり美味しいものが好き」ジェフリー・スタインガーテンもまた、なかなかエキサイティング。「塩の味の違いというのは、結晶の大きさが違うと味が違うと感じるだけで、実際には食卓塩だろうと海塩だろうと味そのものは同じ」という論文に対して、各種の塩を水に溶かして(これで結晶の大きさは関係なくなる)被験者を募り、二重盲験で味の違いの有無を確かめる!これ以外にも、そこまでやるか、的な美食の追及ぶりが痛快な、食にまつわる楽しいエッセイ集。
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by mmemiya | 2007-08-20 21:39 | 読んだ本